少しはじめてみる

50代サラリーマンの読んだ本や購入したものの感想などを書いていきます

「日本人のための第一次世界大戦史 板谷敏彦著」を読みました

今年1番の面白い本でした。
ごく最近になって、歴史の本をよく読むようになったのですが、19世紀中頃から20世紀初頭の時代は何冊か読んでもどうにも分かりにくいと感じる時代です。また、なんとなくモヤモヤしていたこととして、江戸時代末期の倒幕運動から明治維新に至るまでの、幕府を倒さなくてはならないという人達の熱量が理解できませんでした。なんでそこまで駆り立てられたのかについて欧米列強に対抗するためとか色々説明がありますが、もう一つ分かりませんでした。

この本の冒頭に著者も書いています。「私の知る限り、日本人の歴史的知見は日露戦争のあと、いきなり第二次世界大戦に飛んでしまう。大袈裟にいえば、「坂の上の雲」の戦艦「三笠」の次はいきなり悲劇の戦艦「大和」でありゼロ戦なのです」とあります。自分の場合はもっと酷く、田沼意次が出てきた後は、何か一気に色々な人がチャカチャカと出てきて、気がつくと第二次世界大戦になって戦艦大和が出てきて原子爆弾が出てくるような雑なイメージです。

この本のタイトルにある第一次世界大戦に対するイメージは、第二次世界大戦がより強力な兵器が出てくるのに対して、第一次世界大戦では、塹壕と機関銃と鉄条網の地味なイメージしかありませんでした。

上念司氏による「経済で読み解く日本史 明治時代」を読み、日清戦争日露戦争の戦費を自国で賄うことができずに海外からお金を借りてやりくりしている記述に、少し興味を持つようになっていたところに、この本が面白いという話を聞き読んでみることにしたのでした。

この本を読みはじめてびっくりしました。この本では第一次世界大戦の主戦場となったヨーロッパ各国の兵器や装備の進歩が説明されています。例えば、船は帆船であったのが蒸気機関による外輪の船になり、すぐ後にスクリューになります。動力機関も蒸気機関からガソリンエンジンになって、より航続距離に有利なディーゼルエンジンになります。そしてその後、潜水艦となって、海上で充電して海中は電動で動くものが出てきます。大砲や飛行機、銃、毒ガス、戦車も同様にゼロから開発されたり駆け足で進歩していって第一次世界大戦でこれらが投入されたのでした。

こうして海外の様子を読んで明治維新が起こったことが納得できました。海外の主要な国では軍拡に全振りしているのが分かれば、このままでは日本がまずいことになると思うのも無理はないと思いました。

この本の中盤以降では、第一次世界大戦について書かれていますが、その争いの中でうまく立ち回れなかった国が無くなってしまったり、隣り合った国から侵攻されたりしています。日本ももしあと20年明治維新が遅れたら想像したくもないほどひどいことになっていたのではと想像しました。

江戸時代末期に、海外列強が次々とやってきますが、もっと圧倒的な兵器の性能差でコテンパンにやられてもおかしくはなかったのではと、疑問に思っていましたが、この本を読んだ印象では、当時はまだそこまで差がなく、ちょうど第一次世界大戦前の西洋各国がしのぎを削る中に日本も参入できたというのがより正しい理解のようです。ただ、日本もそうですがどの国も大変な苦労をしたので、戦後その見返りを求めることになり、それが国家間のギクシャクした関係となり、日本もアメリカとちょっとうまくいかなくなり、それが結果的に第二次世界大戦に繋がっていったというのが理解できました。